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在監者の人権




ここでは、在監者を取り上げます。

在監者の人権も一般国民と異なった制約に服する点については、今さらですよね。例 えば、在監者には居住移転の自由は認められていません。「私は景色のいい所に住み たい」と言っても、そんなことは認められません。

このように、在監者の人権が一般国民とは異なる制約に服する根拠についても、以前 は特別権力関係理論によって説明がなされていました。

しかし、現在この理論によって説明されていないのは、公務員の場合と同様です。

在監者についても、公務員と同様に憲法が在監者の存在を予定していることが、在監 者の人権制約の根拠となっています。

一般論としては、このように在監者の人権は一般国民とは異なった制約に服するので すが、個別の人権についてどうなっているかを見ていく必要があります。

いろいろな箇所でよく出題されているのが、在監者の喫煙の自由を制限することにつ いてです。喫煙ですから、簡単に言えばタバコです。在監者のタバコを吸う自由を制 限するということです。

最判昭45.9.16です。
「喫煙を許すことにより、罪証隠滅のおそれがあり、また、火災発生の場合には被拘禁者 の逃走が予想され、かくては、直接拘禁の本質的目的を達することができないことは明ら かである。喫煙の自由は、憲法13条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても、あ らゆる時、所において保障されなければならないものではない」

タバコですから、当然に火を使います。そうすると火で証拠を燃やしたりする恐れがありま す。また、わざと火災を発生させるなどして、逃走を図る者出てきかねません。ですからタ バコを吸う自由を制限することも可能であるわけです。

現代においては、いろいろなところで喫煙が禁止されているので、在監者の喫煙を禁止す ることはできるだろうと推測できますよね。


それから、よく出題されているのが閲読の自由です。

最判昭58.6.22です。
「閲読の制限が許されるためには、当該閲読を許すことにより規律及び秩序が害される 一般的、抽象的なおそれがあるというだけでは足りず、監獄内の規律及び秩序の維持 上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが 必要であり、かつ、その場合においても、その制限は、障害発生の防止のために必要か つ合理的な範囲にとどまるべきものと解するのが相当である」

閲読の自由を制限できること自体は、判例は認めています。

問題はいかなる場合に制限できるかです。

「一般的、抽象的なおそれ」では足りずに、「相当の蓋然性」が必要と判示して います。この二つがどう違うかと言うと、誤解を恐れずに簡単に言いますと、 「一般的、抽象的なおそれ」というのは、「まあ、そういうこと(例えば暴動) が起こることも可能性としてはある」ということであり、「相当の蓋然性」という のは、それよりももっと「そういうこと(例えば暴動)が起こりそうだ」という 感じです。

さらに、「相当の蓋然性がある」としても、その制限は、必要かつ合理的な範囲に とどまるものとしています。


ここでちょっと考えてみましょう。

喫煙の自由というのは、憲法13条で保障されているとしても、人間生活にとって 不可欠とはいえないと思います。どちらかと言えば、害があるわけですし、嗜好の要素が大きいです。

これに対して、新聞や本などの閲読の自由は、より人間の本質的な部分に関わって くる部分です。

ですから、喫煙よりも閲読の方が制限する場合には、より厳しい基準で審査されることになるものと思います。


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