私人間効力 |
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この私人間効力は、行政書士試験、公務員試験ともにそれほど出題数は多くあり ませんが、大切なところですので、簡単にではありますが、見ていきましょう。 そもそも憲法が規定する人権規定というものは、伝統的には公権力から国民の 権利自由を守るためにあるとされてきました。つまり「公 対 私人」の間で 妥当するものとされてきたわけです。これは逆に言えば、「私人 対 私人」の 間で妥当するものではないということです。 昔は、権力を有し個人の権利自由を侵害していたのは、国などの言わば「公」 だけでした。ですから、国家との関係において権利が守られれば、十分だったので す。 しかし、資本主義が発達し、会社などの巨大な組織が誕生すると、何も個人の 権利を侵害するのは、国家だけに限らなくなってきました。現代社会においても、 個人の権利を侵害しているのは、何も国家だけではないですよね。マスコミだって ときには侵害することがあります。会社やマスコミも私人です。このような私人 による権利侵害についても、権利を守る必要性が出てきたわけです。 そこで、なんとかして憲法の規定を私人間にも適用して、個人の権利を守ろうと いうのが、私人間効力の話です。 この私人間効力については、大きく分けて二つの考え方があります。直接適用説 と間接適用説です。 直接適用説は、憲法の人権規定を、私人間にも直接に適用しようという考え方 です。この直接適用説を採ると、民法の一般原則である私的自治が害されると いう難点があります。私的自治は、現在大幅に修正されていますが、それでも なお民法の大原則であることに、変わりはありません。それに、やはり憲法の 人権規定というものは、国家権力に対しての規定であることが、その本質です (「国家からの自由」)。私人間にも直接適用することになると、 この本質から脱線することになります。このような理由から、直接適用説は、 判例や通説の採るところとなっていません。 他方、間接適用説は、私法の一般条項を、憲法の趣旨を取り入れて解釈し適用 しようとする考え方です。この間接適用説が判例・通説です。間接適用説を採る ことによって、私的自治も守られますし、国家からの自由という人権の本質から も脱線しないというわけです。 なお、この間接適用説を採ったとしても、憲法の規定の条文や趣旨から、私人間 に直接適用される規定があることを忘れてはいけません。例えば、憲法15条 4項は投票の秘密の規定ですが、ここには「私的にも」と規定されています。 ですからこの規定は、私人間にも直接適用されるわけです。 無断転載・転送を禁じます。 Copyright(C)2004 後藤行政書士事務所 All Rights Reserved. |