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居住移転の自由



居住移転の自由とは、簡単に言えば、どこに住んでもよいということです。このことが 憲法22条に規定されています。職業選択の自由のとなりの条文です。もともとは居住移転の自由は、 経済的自由権です。

これは、昔は居住地と職業が一体となっていたことによります。つまり、農民は農 村に住まわされていましたし、商人は町に住まわされていました。住む場所と職業は一体 となって決められていたわけです。

しかし、現在の憲法においては、職業を自由に決めることが出来ます。
そして、住む場所も自由に決めることが出来なければ、職業も自由に決めることが できないという考えのもと、同じ条文に居住移転の自由が規定されているわけです。

極端な例を挙げれば、漁師になりたいのに、山奥に住まなければならない、という ことになれば、事実上職業も自由に決められないのと同じことですね。

このように、居住移転の自由は、職業選択の自由を間接的に保障しているという側面があるのです。

また、現代においてはそればかりではなく、自由に移転することは、自分の行動を自由に出来るということですから、 人身の自由の側面もあります。

さらに、いろいろなところに行くことによって、様々な経験をし、いろいろなことを知りうる機会が増えるわけですから、 自己の人間形成に資するという精神的な自由の側面ももっています。

このように、もともとは経済的自由権とされていた居住移転の自由ですが、現在においてはその意味が 広くとらえられています。


この居住移転の自由を保障する22条は、第2項で国籍離脱の自由を規定しています。 これは、日本国の国籍から、他国の国籍になることを認めているということです。

このことから、海外旅行に行くことはどうなのかが問題となってきます。

国籍を離脱して海外に行くことは認めながら、日本国民のままでは海外へ行くことは認められていないのか という問題です。

そんなことはないですよね。皆さん行かれてますもんね。

これは、次のような考え方によります。

国籍離脱は永久的に日本から離れていくということです。

それに対して、海外旅行は一時的に日本から離れていくということです。この場合、 永久的に離れていくほうが、離れ方が大きいですよね。国籍離脱の場合は、 もしかしたらもう日本には帰って来ないかもしれません。 それに対して海外旅行は1週間か2週間したら日本に帰ってきます。

ですから、「大は小をかねる」ということで、海外旅行の自由も22条2項で 憲法によって保障されていると考えられているのです。 日本国を離れることについて、より大きな国籍離脱の自由を憲法は保障しているのだから、 より小さな海外旅行についても当然に保障しているはずだということです。


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