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公務員の人権




国家との関係において、一般国民とは異なる扱いを受ける人がいます。
ここでは公務員を取り上げ、次で在監者を取り上げます。

昔は、公務員などは国家とは特別な権力関係にあるとされていました。公務員は行政権の 一翼を担うわけですから、国民の権利を制限する側の人です。

この公務員等の「異なる取り扱い」を説明するために、かつては特別権力関係理論と いうものを用いていました。

特別権力関係理論というものが当てはまる場面では、法治主義は排除され、命令や 強制について個別の根拠は必要とされず、さらに裁判所の司法審査権は及ばないと されていました。

ですから、例えば不服があっても裁判所に訴訟をおこすことはできないとされていました。


しかし、日本国憲法の下、このような包括的な人権制約理論とも言うべき特別権力関 係理論は、過去の遺物となっています。現在においては、採用されていません。

とは言っても、一般国民と全て同じように保障が及ぶわけではありません。

一つ例を挙げましょう。
一般国民には、ストライキという権利が保障されています。ストライキというのは、 わかりますよね。賃金値上げを要求して、勤労者が団結して労務提供を拒否する権利 です。説明するまでもなかったですね。

では、火事が起きたとしましょう。このとき、消防署の職員が、「今ストライキ中だ から」と言って、消火に来なかったとしたら大変なことになりますよね。

同じことが警察の職員についても言えますね。

認めることによって、国民の生活などに支障をきたす場合があります。

ですから、公務員には、保障されていない権利があるのです。

このように、公務員にはその職務上、一定の範囲で人権が制約されています。

これを以前は特別権力関係理論により説明していたわけです。

しかし、現在においては、この理論によっては説明されていないのは、先ほど御話し したとおりです。

現在、公務員の人権制約の根拠は、憲法が公務員の存在とその自律性を当然に予定していることに 求められます。

公務員が存在し、その自律性を当然に予定しているので、公務員は一般国民とは異なった制 約に服するというわけです。

公務員の人権制約の場面として、とりわけ問題となるのは、政治活動の自由と労働権です。

実際の行政においては、行政の中立性が保たれることによって、国民の信頼が得られるわけです。 例えば、特定の思想の持ち主のみを優遇するような行政では、国民の信頼を得られないのは明らかですよね。 ですから、政治的な中立性が要求され、それによって政治活動の自由が制約されているのです。

参考判例
猿払事件判決
最判昭49.11.6


労働権については、その職務の公共性から制約されるとされています。先ほどからお話しているように、 公務員がストライキをしたりすると、とんでもない事態になったりします。公務員の職務というものは、 非常に公共性の強いものですから、労働権の制約も許されるとされているのです。

参考判例
全農林警職法事件
最判昭48.4.25


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