幸福追求権 |
|
憲法には、様々な権利が規定されています。信教の自由や表現の自由、また生存権や 教育を受ける権利などです。 では、こういった憲法に直接規定されていない権利については、憲法は一切保障し ていないのでしょうか。これが、新しい権利についての問題点です。 当たり前の話ですが、世の中は動いています。文明の発達というものはすさまじい 勢いです。それとともに今までは考え付かなかった問題というものも発生します。 このような世の中の動きに、憲法も対応していかなければなりません。もちろん、 そのたびごとに憲法改正をして対応していくことも出来ます。 でも、それではいちいち大変です。 そこで、憲法が規定している幸福追求権を根拠にして、新しい権利が生まれてくるの です。幸福追求権は「人が幸福を追求するために必要であると考えられる権利を包括 的に規定している」ので、この権利を根拠に生まれてくるのです。 憲法を制定するときに、これから生じるであろう社会問題を予想して、すべての人 権を詳細に規定しておくことは不可能です。憲法が一つ一つ規定している権利(これ を人権カタログと言います)は、憲法制定当時に重要であると考えられた権利を、列 挙したにすぎないのです。 憲法が、列挙されていない権利を保障していないと考えるのは、不自然です。やはり、 絶えず変わっていく世の中に合うように、憲法の人権を考えていくべきです。そのため には、憲法の規定に列挙されていない権利でも、憲法によって保障されていると考える べきなのです。 よって、幸福追求権を根拠に憲法の人権カタログに規定されていない権利を、新しい 人権として認めるわけです。 これが、新しい人権です。 では、実際にどのような権利が、憲法で新しい人権として保障されていると、考えられて いるのでしょうか。 京都府学連デモ事件判決 最判昭44.12.24 「個人の私生活の自由の一つとして、何人も、承諾なしに、みだりに容ぼう・姿態を撮影されない自由を有する。 これを肖像権と称するかどうかは別として、警察官が、正当な理由なく個人の容ぼう等を撮影することは、 本条(13条)の趣旨に反し、許されない」 上記のように判示して、プライバシー権という言葉は使っていませんが、肖像権については 認めていると考えられます。肖像権は憲法の人権カタログに列挙されていませんから、新しい人権と言えますね。 そして、この判例は続けて次のように言っています。 「現に犯罪が行われ、若しくは行われたあと間がないと認められる場合で、証拠保全の必要性・緊急性があり、 その撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法をもって行われるときには、警察官による撮影は許容される」 つまり、肖像権と呼ぶかどうかは別ですが、権利としては認めつつ、さらに、 犯罪が行われている、もしくは間がない 証拠保全の必要性・緊急性がある 相当な方法で撮影が行われた このような場合には、警察官による撮影は許されると判示しているわけです。 前科照会事件判決 最判昭56.4.14 「前科・犯罪経歴は人の名誉・信用にかかわり、これをみだりに公開されないのは法律上の保護に値する利益である」 このように判示しています。 この事件は、弁護士が市区町村などの地方公共団体に対して、ある者の前科を照会した場合に、 その地方公共団体が応じたことに対するというものです。そして、市区町村長が、それに応じたことを、 公権力の違法な行使と判示したものです。 この判例も、プライバシー権という言葉こそ使っていませんが、前科についての情報をみだりに 公開されないということを、プライバシー権の一つとしてとらえているものと思われます。 これら二つの判例はよく出てきますから、覚えておいて下さいね。 無断転載・転送を禁じます。 Copyright(C)2004 後藤行政書士事務所 All Rights Reserved. |