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【 解答 】
2
【 解説 】
◆1
書面によって贈与契約がなされた場合には、当事者は撤回することが出来ません(550条本文)。しかし不倫関係を維持する目的で贈与契約がなされた場合には、贈与契約は公序良俗違反として無効になります(708条、最大判昭45年10月21日)。したがって、書面によって贈与契約がなされたとしても、AはBからの引渡請求を拒むことが出来ます。
よって、肢1は誤っています。
◆2
不法原因給付の場合には、「給付」があった場合には、給付したものの返還を請求することが出来ません(708条)。不倫関係を維持する目的で未登記建物を贈与し、さらに引渡す行為は、不法原因給付にいうところの「給付」があったと言えます(最大判昭45年10月21日)。したがって、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできません。
よって、肢2は正しいです。
◆3
不法原因給付の場合には、「給付」があった場合には、給付したものの返還を請求することが出来ません(708条)。不倫関係を維持する目的で未登記建物を贈与し、さらに引渡す行為は、不法原因給付にいうところの「給付」があったと言えます(最大判昭45年10月21日)。その結果、贈与者は所有権に基づいて給付した物の返還を請求できません。そしてその反射的効果として、目的物の所有権は贈与者から受贈者に帰属することになります。要するに、受贈者が所有権者になるということです。ゆえにAは所有権者でなくなります。したがって、たとえA名義の保存登記をしたとしても、Bに対して甲建物の返還を請求することができません。
よって、肢3は誤っています。
◆4
不倫関係を維持する目的で既登記建物を贈与し、さらに引渡したとしても、それだけでは不法原因給付にいうところの「給付」があったとは言えません(最判昭46年10月28日)。したがって、Aは、Bからの甲建物についての移転登記請求を拒むことが出来ます。
よって、肢4は誤っています。
◆5
判例は、贈与契約成立のいきさつにおいて、給付をした者(本問のA)に多少の不法の点があったとしても、他方当事者(本問のB)にも不法の点があり、前者の不法性が後者のそれに比しきわめて微弱なものにすぎない場合には、民法90条および708条は適用がなく、前者は契約目的物の返還を請求することができるとしています(最判昭29年8月31日)。したがって、本肢において、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することが出来ます。
よって、肢5は誤っています。
以上より、正解は肢2です。
【 解き方 】
「給付」があったといえるかどうかを中心として、不法原因給付についての出題です。「給付」があったといえるかどうかは、書面によらない贈与の場合と混同しがちな受験生が多いです。どのような場合に「給付」(708条)があったといえるのか、また「履行」(550条)が終わったといえるのか、きちんと整理して覚えておきましょう。
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