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【 解答 】
1
【 解説 】
◆1
その通りです。判例は、不動産の取得時効の完成後、占有者が所有権移転登記をしないうちに、その不動産につき第三者のために抵当権設定登記がなされた場合であっても、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な時間、占有を継続したときは、占有者が当該抵当権の存在を容認していたなどの特段の事情がない限り、占有者はその不動産を時効により取得し、その結果、当該抵当権は消滅する、としています(最判平24年3月16日)。
よって、肢1は妥当です。
◆2
そもそも不動産を時効により取得した占有者が所有権を第三者に対抗するためには、登記が必要です。しかし、不動産を時効により取得した占有者と、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者とは、時効完成時には当事者の関係に立ちます。したがって、不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなくても時効取得をもって対抗することができます(大判大7年3月2日)。
よって、肢2は妥当ではありません。
◆3
不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができません(最判昭33年8月28日)。前段は正しいです。しかし、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続して時効が完成したときは、占有者はその不動産を時効により取得し、当該不動産を譲り受けた者に対しては、登記がなくとも時効取得をもって対抗することができます(最判昭36年7月20日)。したがって、後段は誤りです。
よって、肢3は妥当ではありません。
◆4
判例は、取得時効完成の時期は、必ず時効の基礎となる事実の開始した時を起算点として決定すべきであるとしています(最判昭35年7月27日)。したがって、占有者が起算点を自由に選択して取得時効を援用することはできません。
よって、肢4は妥当ではありません。
◆5
判例は、占有者が取得時効の成立要件を充足していることをすべて具体的に認識していなくても、背信的悪意者と認められる場合があり、その場合であっても少なくとも不動産を譲り受けて登記をした者が占有者による多年にわたる占有継続の事実を認識している必要があるとしています(最判平18年1月17日)。したがって、占有者が取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していたことを要するとは言えません。
よって、肢5は妥当ではありません。
以上より、正解は肢1です。
【 解き方 】
時効取得に関する重要判例からの出題です。正解肢である肢1は、最近の判例ですが、内容は肢3の判例と同様です(所有権か抵当権かの違い)。ですから、仮に肢1の判例を知らなくても、肢3の判例を知っていれば、肢1が正解だとわかると思います。
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