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解答




【 解説 】

◆1
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができます(608条1項)。他方、賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は賃貸借の終了の時に、その価格が現存する場合に限り、賃貸人の選択に従い、その支出した金額又は増価額について償還をしなければなりません。ただし、裁判所は賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができます(608条2項、196条2項)。したがって、直ちにその償還を請求することができるのは必要費であり、有益費については直ちに償還できません。

よって肢1は妥当ではありません。


◆2
賃貸人の承諾を得て、賃借権が新賃借人に譲渡された場合、賃貸人と旧賃借人との間で交付された敷金が、賃借権の譲渡に伴って賃貸人と新賃借人間に移転するのかの問題です。この点について判例は、敷金交付者(本問の旧賃借人B)と賃貸人の間で資金をもって新賃借人(本問のC)の債務の担保とすることを約し、又は新賃借人に敷金返還請求権を譲渡するなどの特段の事情のない限り、新賃借人に承継されないとしています(最判昭53年12月22日)。したがって、特段の事情がない限り、AはBに対して本件敷金を返還しなければなりません。

よって肢2は妥当です。


◆3
適法に建物転貸借がなされた場合、賃貸人と賃借人(転貸人)間でなされた賃貸借契約の合意解除は、その解除をもって転借人に対抗できません。したがって、賃貸人Aは転借人Dに対して甲建物の明渡しを求めることができません。

よって肢3は妥当ではありません。


◆4
肢2は賃貸人と賃借人(転貸人)間が合意解除の場合ですが、本肢は賃貸人と賃借人(転貸人)間が債務不履行解除の場合です。この場合について判例は、転貸借は履行不能により終了し、転借人は賃貸人に対抗することができないとしています(最判昭36年12月21日)。したがって、賃貸人Aは転借人Eに対して甲建物の明渡しを求めることができます。

よって肢4は妥当ではありません。


◆5
賃貸借契約中に賃貸目的物たる不動産の所有権が移転した場合に、敷金も移転するのかどうかという問題です。この点について判例は、賃貸借契約が存続中に目的不動産の所有権が移転し、新所有者が賃貸人たる地位を承継した場合には、旧賃貸人に差し入れられていた資金は、旧賃貸人のもとに未払賃料があればこれに当然充当され、残額があればそれについての権利義務が新賃貸人に承継されるとしています(最判昭44年7月17日)。したがって、新賃貸人Fが旧賃貸人Aから本件敷金の引渡しを受けていなくとも、賃借人Bと新賃貸人F間の賃貸借の終了時に、FはBに対して本件敷金の返還義務を負います。

よって肢5は妥当ではありません。


以上より、正解は肢2です。



【 解き方 】
賃貸借契約に関する代表的な論点からの出題です。どれも有名な論点であり、合格のためには正解しておくべき問題です。



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