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解答




【 解説 】

◆1
人は出生によって権利能力を取得します(3条1項)。なので、胎児については権利能力がないのが原則です。しかし不法行為に基づく損害賠償請求(721条)、相続(886条1項)、遺贈(965条)については、すでに生まれたものとみなされます。すでに生まれたものとみなされるのであるならば、胎児の母が、胎児の出生前に胎児を代理することができるのかが問題です。判例は、この場合にについて、胎児が生きて生まれることを停止条件として、生きて生まれれば不法行為等の時期に遡って権利能力を取得するとしています(大判昭7年10月6日)。なので、胎児の段階では権利能力を有せず、したがって、母は胎児を代理して不法行為の加害者に対し損害賠償請求をすることができないことになります。

よって肢1は妥当ではありません。


◆2
失踪の宣告を受けた者は、死亡したものとみなされますが(31条)、これはそれまでの法律関係が終了するだけであり、失踪宣告を受けた者の権利能力が失われるわけではありません。したがって、生存することの証明がなされ失踪の宣告が取り消された場合には、失踪の宣告後その取消し前になされた行為は影響を受けず、効力を有します。

よって肢2は妥当ではありません。


◆3
成年後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許諾を得て、その任務を辞することができます(844条)。そもそも成年後見人は事理弁識能力を欠く常況にあるわけですから、成年被後見人の許諾を得ることは意味がありません。また、辞するには、正当事由が必要です。

よって肢3は妥当ではありません。


◆4
制限行為能力者は、自身の行為を取り消すことができます(120条1項)。なので、成年被後見人は、後見開始の審判が取り消されなくとも、これを取り消すことができます。

よって肢4は妥当ではありません。


◆5
後見開始の審判を受ける前の法律行為については、制限行為能力を理由として当該法律行為を取り消すことはできません。他方、民法上、法律行為をなすには意思能力が必要であり(大判明38年5月11日)、意思能力を欠く者がなした法律行為は無効です。この意思能力の問題は、行為能力の問題は別個の問題です。なので、法律行為の時に意思能力を有しないのであれば、意思能力の不存在を立証して当該法律行為の無効を主張することができます。

よって肢5は妥当です。


以上より、正解は肢5です。



【 解き方 】
権利能力、制限能力および意思能力に関する基本的な問題です。肢1でやや迷うかもしれません。しかし他の肢に難解な肢はありませんから、基本をしっかりと押さえておけば正解にたどり着けると思います。



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