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解答
1
【 解説 】
事務管理の成立要件
@他人の事務の管理であること
A他人のためにする意思があること
B法律上の義務がないこと
C本人の意思および利益に反することが明らかでないこと
◆1
その通りです。本肢においては、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったのであるから、Bの行いは事務管理です(697条)。事務管理の場合には損害賠償請求はできません。
よって肢1は妥当です。
◆2
BはAから不在中における甲の管理を頼まれていたのであるから、Bの行いは準委任です(656条)。準委任については、委任に関する規定が準用されます。委任においては、受任者が委任事務を処理するために自己に過失なくして損害を受けたときは、委任者に対して損害賠償請求をすることができます(650条3項)。本肢においては、Bの不注意により足を滑らせて転倒し受傷しており、Bには過失があります。なので、Bは損害賠償を請求できません。
よって肢2は妥当ではありません。
◆3
Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったのですから、Bの行いは事務管理です(697条)。事務管理の場合には報酬を請求することはできません。
よって肢3は妥当ではありません。
◆4
Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったのですから、Bの行いは事務管理です(697条)。そして事務管理を行ったBが本人Aの名で第三者Cと契約を締結しても、その行為の効果は当然には本人には及びません。事務管理に該当するからといって、事務管理者Bに代理権が与えられるわけではありません。なので、Cは、Aに対して工事代金の支払いを直接に請求することができません。
よって肢4は妥当ではありません。
◆5
Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったのですから、Bの行いは事務管理です(697条)。事務管理においては、管理者が本人のために有益な費用を出したときは、本人に対してその償還を請求することができます(702条1項)。しかし、事務管理者が本人の意思に反して管理をしたときは、本人が現に利益を受ける限度で費用の償還請求をすることができます。本肢においては、AはCによる修繕を望んでいないが、甲にとって必要不可欠な修繕であることからすれば、本人が現に利益を受ける限度で費用の償還請求をすることができます。BはAに対してその費用の支払いを請求することができないわけではありません。
よって肢5は妥当ではありません。
以上より、正解は肢1です。
【 解き方 】
事務管理の場合には、費用償還請求はできますが、損害賠償請求と報酬請求はできません。これは有名な論点です。ここを押さえておけば本問は比較的容易に解くことができます。なかなか事務管理まで勉強は進まないかもしれませんが、基本的事項についてはやはり押さえておきましょう。
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