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解答
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【 解説 】
◆1
本肢のような抵当権設定後に建物が建築された場合においては、抵当権者は土地を更地として評価しているので、法定地上権は成立しないのが原則です。しかしこの場合において、抵当権者が抵当権を実行して土地を競売すると、建物は収去されなければならなくなることから、抵当権者は、土地とその上の建物を一括して競売することができます(389条1項)。これを一括競売と言います。抵当権者は、「一括競売をしてもよい」のであり、「一括競売をしなければならない」わけではありません。
よって肢1は妥当ではありません。
◆2
甲抵当権設定時には、土地と建物の所有者が異なるため、その後土地と建物が同一人の所有となっても法定地上権は成立しません。
本肢での問題は、Bが建物を取得して土地と建物が同一人に帰属し、さらに土地に乙抵当権を設定したことです。しかも、その後、Bは甲抵当権の被担保債権について弁済したので甲抵当権は消滅しているので、乙抵当権について法定地上権成立の要件を満たしているといえるのかです。
このような事案について、判例は「当該土地と建物が甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても、乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは法定地上権が成立する」としています(最判平19.7.6)。したがって、本肢の場合、この建物のために法定地上権が成立します。
よって肢2は妥当ではありません。
◆3
借地上の建物に一番抵当権を設定した後に土地の所有権を取得し、さらに建物に二番抵当権を設定した場合には、法定地上権が成立します(大判昭14.7.26)。この場合、一番抵当権は法定地上権の要件を満たしていません(土地と建物が同一の所有者に属していないから)。他方、二番抵当権はその要件を満たしています。建物に抵当権を設定した場合には、二番抵当権が法定地上権の要件を満たしていれば、法定地上権の成立を肯定したほうが一番抵当権者の利益にも合致するからです。
他方、土地と建物が別々の所有者に帰属し土地に一番抵当権が設定された後、土地と建物が同一の所有者となり、土地に二番抵当権が設定された場合には、二番抵当権について法定地上権の要件を満たしていたとしても、法定地上権は成立しません(最判平2.1.22)。この場合は、法定地上権が成立しないと判断した第一抵当権者を害するからです。
よって肢3は妥当ではありません。
◆4
本肢のような事案につき、判例は「所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、右建物が取り壊され、右土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しない」としています(最判平9.2.14)。
よって肢4は妥当です。
◆5
建物がAとBの共有、土地がAの単有で、土地に抵当権が設定された場合には、判例は法定地上権の成立を認めています(最判昭46.12.21)。この場合、共有者Bの利益を害することはないからです(むしろ、Bとしては利益になっています)。
よって肢5は妥当ではありません。
以上より、正解は肢4です。
【 解き方 】
法定地上権に関する有名な判例からの出題です。法定地上権については、論点も多く、かつ事案も複雑なことが多いです。要件ごとに整理しておく必要があるでしょう。
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