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行政書士試験・公務員試験等合格講座−めざせ憲法の達人!
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解答




【 解説 】

◆1
肖像権については、判例は憲法13条を根拠として認めています(最大判昭44.12.24)。しかし、警察官が犯罪捜査の必要上行う写真撮影については、その写真の中に犯人以外の第三者が写っていても、許容される場合があります。
@現に犯罪が行われ、もしくは行われたのち間がないと認められる場合であること
A証拠保全の必要性および緊急性があること
B写真撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもって行われていること
これらの要件を満たす場合には、警察官による写真撮影は、その対象の中に、犯人の容ぼう等のほか、犯人の身辺または被写体とされた物件の近くにいたためこれを除外できない状況にある第三者である個人の容ぼう等を含むことになっても憲法13条、35条には違反しないと解されています(同上の判例)。

よって肢1は妥当ではありません。


◆2
確かに、前科は個人の名誉や信用に直接関わる事項なので、これをみだりに公表されないのは、法律上の保護に値する利益です。しかし、最高裁は、事件それ自体を公表することに歴史的又は社会的な意義が認められるような場合には、事件の当事者についても、その実名を明らかにすることが許されないとはいえないとしています(最判平6.2.8)。なので、事件それ自体を公表することに歴史的または社会的な意義が認められるような場合であれば、事件当事者の実名を明らかにすることは許されることがありえます。

よって肢2は妥当ではありません。


◆3
判例は、個人の私生活上の自由の一つとして、何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有するものというべきとして、憲法13条によって保護されるとしています(最判平7.12.15)。

よって肢3は妥当ではありません。


◆4
本肢のような事案について判例は、プライバシーの侵害については、その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較衡量し、前者が後者に優越する場合に不法行為が成立するとしています(最判平15.3.14)。なので、特段の事情がない限り、不法行為が成立するとしている本肢は妥当ではありません。

よって肢4は妥当ではありません。


◆5
その通りです。判例は、氏名、生年月日、性別及び住所からなる4情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、変更情報も、転入、転出等の異動事由、異動年月日及び異動前の本人確認情報にとどまるもので、これらはいずれも、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえないとしています(最判平20.3.6)。

よって肢5は妥当です。


以上より、正解は肢5です。



【 解き方 】
判例を知っていれば、比較的容易に解ける問題です。判例の重要性を再認識させられる問題でしょう。
各肢を見ていくと、肢1は、もし犯人以外の第三者が写ってしまうような写真撮影はできないとなったら、犯罪捜査が滞ってしまうだろうと考えられると思います。肢2は、歴史的又は社会的な意義が認められるような場合であれば、前科を公表してもいいかなあと思われるでしょう。指紋がプライバシーとして保護されるのは、有名です(肢3)。表現の自由との関係で、原則として不法行為が成立することはないだろうと推測できると思います(肢4)。氏名・生年月日・性別・住所は、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報ではないだろうと推測できますし、また、実際に住基ネットが運用されていることからも、本肢は妥当であろうと推測できると思います(肢5)。



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