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解答
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【 解説 】
◆まず肢1についてです。
本肢のような事案につき、判例は「嫡出でない子につき、父からこれを嫡出子とする出生届がされ、又は嫡出でない子としての出生届がされた場合において、戸籍事務管掌者によって受理されたときは、認知届としての効力を有する」としています(最判昭53.2.24)。したがってAがCを嫡出子とする出生届をなした場合において、誤ってこれが受理されたときは、この届出により認知としての効力が生じます。
よって肢1は正しいです。なお、この判例は認知について非常に有名な判例です。ぜひとも覚えておいて下さい。
◆次に肢2についてです。
嫡出否認の訴えは、772条の推定を受ける嫡出子について父子関係を切断する方法です。また、親子関係不存在確認の訴えは、772条の推定を受けない嫡出子について父子関係を切断する方法です。772条の推定を受ける嫡出子とは、婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子です(772条)。
本肢においてB女は婚姻成立後150日を経て、Cを出産しています。よってCは772条の推定を受けない嫡出子であり、Aが父子関係を切断するには親子関係不存在確認の訴えの方法によることが必要です。
よって肢2は正しいです。
◆続いて肢3です。
離婚した後200日経過してから妻(正確には元妻)が出産した場合には、772条の規定にしたがえば推定される嫡出子となり、A男が父子関係を切断するには嫡出否認の訴えによるのが原則です。
しかし、本肢にように離婚の1年以上前から刑務所に収容されていた場合や一年以上南極大陸にいた場合など、妻が出産した子が夫の子であることがありえないような場合には、生まれてきた子は夫の子とは推定されず、A男は親子関係不存在確認の訴えによって父子関係を切断することが出来ます。したがってA男はCとの父子関係を争うためには嫡出否認の訴えによらなければならないわけではなく、親子関係不存在確認の訴えによることが出来ます。
よって肢3は誤っています。
◆さらに肢4です。
嫡出否認の訴えは、夫がこの出生を知った時から一年以内に提起しなければなりません(777条)。嫡出否認の訴えは、772条の推定を受ける嫡出子について父子関係を切断する方法ですので、推定を受ける子の立場を早期に安定させるために期間が制限されているわけです(他方、親子関係不存在確認の訴えには期間制限がありません)。この嫡出否認の訴えにおいて、夫が成年被後見人であるときは、後見開始の審判の取消しがあった後に夫が子の出生を知った時からこの期間(777条の期間)を起算します。
よって肢4は正しいです。
◆最後に肢5です。
嫡出否認の訴えは、子又は親権を行う母に対して行います(775条前段)。母がすでに死亡している等して親権を行う母がいないときは、家庭裁判所は特別代理人を選任しなければなりません(同条後段)。
よって肢5は正しいです。
以上より、正解は肢3です。
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