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解答




【 解説 】

◆まずアです。
本来、弁済義務がないにもかかわらず弁済した場合には、不当利得として返還請求ができることになるはずです(原則)。しかし、これには例外があり、非債弁済に該当する場合には返還が認められません(例外)。非債弁済に該当するには、債務がないにもかかわらず弁済し、かつその者が弁済当時に債務の存在していないことを知っていたことが必要です(705条)。これは債務が不存在であることを知っていながら任意で弁済したような者に返還請求を認めるのは、公平の理念に反するからです。

しかし債務の不存在を知っていたとしても、アのように賃貸人Bから賃料不払いを理由とした賃貸建物明渡請求訴訟を提起された場合における防禦方法として支払いをなすものであることを特に表示したうえで、Bに弁済を行った場合には、賃借人Aは、賃貸人Bに対し、不当利得として給付した弁済額の返還を請求することができます。このような場合には、任意で弁済したとは言えず、自分の立場を守るために防禦方法として支払いをなすものであることを特に表示して仕方なく弁済したわけです。このような場合には返還請求を認めています(例外の例外)。

よってアは正しいです。


◆次にイです。
賭博行為は無効であるから、原則を貫けば不当利得として返還請求ができることになるはずです。

しかし法は賭博のような反社会的な行為をした者に返還請求を認めることは妥当でないとして、このような場合の返還請求を認めていません。これを不法原因給付と言います(708条)。

よって本来であればAはBに対して骨董品の返還請求はできません。

しかし、不法原因給付であっても、当事者間で自発的にAがBに返還すること自体は認められます。判例も「不法原因給付であってその返還を請求し得ないものであっても、不法原因契約を合意の上解除してその給付を返還する特約をすることは、本条(708条)の禁ずるところではない」としています(最判昭28.1.22)。したがって本肢におけるAのBに対する骨董品の返還を請求は認められます。

よってイは正しいです。


◆続いてウです。
これは転用物訴権と言われている問題です。転用物訴権とは、本肢のように契約上の給付が契約の相手方(C)のみならず第三者(B)の利益になった場合において、相手方(C)から当該給付の対価を得られなかった給付者(A)が、当該第三者(B)に利得の返還を請求することを言います。ようするに、AとしてはBの所有物を修繕し、Aが修繕したことによってBの所有物の価値が上がったのだから、修繕代金をAが払えと主張したいわけです。そしてそれが認められるかどうかという問題です。

判例は本肢のような事案について、「建物賃貸人から請け負って修繕工事をした者が賃借人の無資力を理由に建物所有者に対し不当利得の返還を請求することができる場合は、建物所有者が対価関係なしに利益を受けたときに限られる」としています(最判平7.8.19)。

本肢においては、Bは権利金を受け取っていません。にもかかわらず修理代金を払うとすると、いわば二重の負担を負うことになります(権利金を受け取れない、修理代金を支払う)。よってこのような場合には、対価関係なしに利益を受けたとは言えず、Aは、Bに対して、不当利得として修繕代金相当額の返還を請求することはできません。

よってウは正しいです。


◆さらにエです。
愛人関係を維持するために、自己の有する未登記建物をBに贈与し、これを引き渡した場合、不法原因給付に当たるので、建物の返還を請求することは出来ません。なお、未登記建物の場合、不法原因給付として建物の返還請求をすることができなくなるには、引渡しがなされていることが必要です(最判昭45.10.21)。ちなみに既登記建物の場合には、引渡だけでは足りず登記も移転していることが必要です(最判昭46.10.28)。

よってエは誤っています。


◆最後にオです。
判例は、本肢のような事案について「第三者の強迫によりBがAから金銭を借りて、貸付金をDに給付する契約をした後、Bが強迫に基づきこの契約を取り消した場合には、Aからの不当利得返還請求につき、Bは、特段の事情のない限り、AのDに対する給付によりその額に相当する利得を受けたものと見るのが相当である」としています(最判平10.5.26)。

このことから考えますと、BD間に何らかの関係性があり、貸付金をDが受領したことによってBが利益を受けたような場合を判例は前提としているものと考えられます。

したがって本肢のようにBとDとの間には何らの法律上または事実上の関係がない場合には、Bは「特段の事情」があり、AのDに対する給付によりその額に相当する利得を受けていないものと言えます。この場合には、Aは、Bに対し、不当利得として貸付金相当額の返還を請求することができません。

よって、オは誤っています。


以上より、誤っているのはエとオであり、正解は肢2です。



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