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解答




【 解説 】

◆まずアです。
委任契約の場合に、委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は受任者の請求により、その前払をしなければなりません(649条)。これは簡単に言えば、お願いしている以上は、前もって費用がかかることがわかっているなら払いなさいということです。

他方、事務管理の場合には、費用の前払の規定はありません。これは事務管理の場合は、いわばおせっかいで行うものである以上、前払請求まで認めることはできないということです。

よってアは正しいです。


◆次にイです。
委任契約の場合、受任者は委任の本旨に従い、善良なる管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負います(644条)。

そして受任者が委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができます(650条1項)。

他方、事務管理の場合には、管理者が本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができます(702条1項)。いくらおせっかいであったとしても、本人のために有益であるならば、費用を払いなさいということです。

よってイは正しいです。


◆続いてウです。
代理をどのように考えるかという問題ともかかわってきますが、代理権授与を契約と考える通説的な考えにしたがうと、委任契約と代理権授与契約とは別個のものとされています。つまり委任契約を締結したからといって、法律上当然に代理権が認められるわけではありません。

事務管理についても、法律上当然に代理権が発生するわけではありません。なおこの点について判例は「事務管理者が本人の名で第三者との間に法律行為をしても、その行為の効果は、当然には本人に及ぶ筋合ではなく、そのような効果が発生するためには、代理その他別個の法律関係が伴うことを必要とする」としています(最判昭36.11.30)。

よってウは誤っています。


◆さらにエです。
委任においては、受任者は委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければなりません(646条1項本文)。当たり前ですよね。売買の委任の場合に、代金を受け取っておきながら委任者に引き渡さなくてもいいわけありませんからね。

事務管理においても、この委任の規定の準用があります(701条、646条)。ですので、委任者に引き渡さなければなりません。これも当たり前の話であって、事務管理の過程で金銭を受け取った場合に、その金銭を本人に引き渡すのは当然です。

よってエは誤っています。


◆最後にオです。
委任の場合、受任者は委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければなりません(645条)。常識的に考えると、当然だと思います。委任事務の処理が終了しながら、委任者に何も報告しなくてよいということは通常はありえません。

事務管理においても、この委任の規定の準用があります(701条、645条)。事務管理はそもそもおせっかい的な側面があるわけですから、おせっかいをした以上は、きちんと本人に結果を報告しなければなりません。

よってオは誤っています。


以上より、正しいものの組合せはアとイで、正解は肢1です。



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