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解答




【 解説 】

◆まずは肢1です。
判例は「特定物の売買における売主のための保証人は、特に反対の意思表示のない限り、売主の債務不履行により契約が解除された場合における原状回復義務である既払代金の返還義務についても保証責任がある」としています(最判昭40.6.30)。

本肢のような場合に、Aの債務不履行を理由として解除がなされますと、Bは土地を取得できません。ではBとしては保証人に「保証人なんだから土地を引き渡せ」と主張できるかといえば、土地のような特定物の場合にそれは不可能です。とすれば、既払代金の返還義務を保証の範囲に含めなければ、保証契約の意味がなくなってしまいます。つまり買主としては、本肢のような場合には保証人から既払代金を払ってもらえるという趣旨で保証契約を締結していると言えるわけです。

よって肢1は「可能です」とは回答できません。


◆次に肢2です。
物上保証人があらかじめ求償権を行使できるか否かについて、判例は「債務者の委託を受けその債務を担保するために自己の不動産に抵当権を設定した者(物上保証人)は、被担保債務の弁済期が到来したとしても、債務者に対しあらかじめ求償権を行使することはできない」としています(最判平2.12.18)。

委託を受けた保証人は、事前求償権を行使できる場合があります(460条)。これは、保証人はみずから債務を負っており(保証債務)、その債務が無限に拡大することを防止するためです。それに対して物上保証人は、債務を負っているのではなく、物上保証の範囲で限定的に責任が生じるにすぎません。なので物上保証人には事前求償権はありません。

よって肢2は「可能です」とは回答できません。


◆続いて肢3です。
貸金等根保証契約においては、極度額を定めなければ、その効力は生じません(465条の2第2項)。しかしそもそもこの規定は法人には適用がありません。

本肢における甲は法人ですので、Bが甲に対して保証債務の履行を求めてきた場合、甲は保証債務の履行を拒むことが出来ません。

よって肢3は「可能です」とは回答できません。


◆さらに肢4です。
保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含します(447条)。したがって賃料の不払いによって賃貸借契約が解除された場合、賃借人の保証人は、賃借人が立ち退くまでの間に生じた損害についても保証債務に含まれます。

よって肢4は「可能です」とは回答できません。


◆最後に肢5です。
本肢においては、「私」とCの二人の保証人がいます。このような場合、債権者との関係では主たる債務について平等の割合をもって分割した額についてのみ保証債務を負担するという分別の利益があります。

しかし、本肢では「私」とCはAの債務の全額について責任を負うものとする特約を結び、特約で分別の利益を排除しております。このような場合には、各保証人は全額を弁済しなければなりません(465条1項)。

これにしたがって、「私」は全額を弁済しています。全額を弁済したとしても、この場合には自己の負担部分を超過している部分(200万円)につき、他の保証人に求償することができます。

よって肢5は「可能です」とは回答しえます。


以上より、正解は肢5です。



【 解き方 】
難問の部類に入ると思います。肢1〜4まで、「可能です」と回答しうるかどうかはっきりとしないものもあり、迷う人も多いのではないでしょうか。肢3の貸金等根保証契約のように細かい規定も出題されており、ここまで勉強が進んでいない受験生も多いことでしょう。しかも最後の肢5が正解なので、最後まで読まないと正解が出てこないということも、本問を難しくしている一因だと思います。ただ肢5は、感覚的に何となく可能だと思えるのではないでしょうか。肢1〜4をはっきりと理解できなくても、肢5は保証債務を履行した後の求償の話ですから、この場合は可能と言えると考えが及ぶのではないかと思います。そこに考えが及べば、他の肢がはっきりとわからなくても、肢5を選択できると思います。この手の問題の場合には、全ての肢に自信が持てなくても、要は「可能です」と回答しうる肢がわかればいいわけです。深く考えすぎないようにしましょう。



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