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解答




【 解説 】

本問の【考え方】を公示説と言います。簡単に言えば、依然として山の上にあるならば、抵当権が設定されている山の木だから抵当権の効力が及び第三者に対抗できるが、山から搬出してしまうと、どこの山の木なのかがわからないので抵当権の効力が及ぶものの第三者には対抗できない、ということです。

◆アについて
抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却された場合には、その後に第三者が搬出したとしても、そもそも抵当権の効力が及んでいる状態から第三者が搬出したので、抵当権者としては抵当権に基づく物権的請求権を行使して第三者の搬出行為の禁止を求めることができます。

よってアは【考え方】に適合します。


◆イについて
抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却されています。この場合には依然として山の上に木材があるので抵当権の効力が及びしかも第三者に対抗できます。

また、判例は占有改定による引渡の場合に即時取得が成立するかどうかについて、否定しています(最判昭35.2.11)。よって第三者が即時取得することもありません。

よってイは【考え方】に適合します。


◆ウについて
本肢においては、別の場所に搬出されていますので、すでに山の上にはありません。この場合には、第三者に抵当権を主張できないかのようです。

しかし、本肢の第三者はBと取引関係にない者であり、しかも不当に別の場所に搬出しています。このような者はそもそも対抗関係を争う「第三者」(177条)ではありません。簡単に言えば、この第三者は泥棒かもしれません。このような者に抵当権を主張できないということはありません。よって抵当権者であるA銀行は第三者に対して元の場所へ戻すように請求できます。

よってウは【考え方】に適合します。


◆エについて
本肢においては、木材が山林から別の場所に搬出された後に、第三者がBから木材を買い引渡しを受けています。つまりすでに山の上にありません。この場合、抵当権者としては抵当権の効力が及ぶものの第三者には対抗できないことになります。

ここで、第三者は当該木材が抵当山林から搬出されたものであることを知っているので、この点から抵当権者は抵当権を主張できるのではないかと考えてしまいがちです。しかし、この点については、第三者の善意悪意は問われません。第三者が善意か悪意かという主観的な側面は関係なく、木材が抵当不動産と場所的一体性を保っているかどうかで判断するのです。

よってエは【考え方】に適合しません。


◆オについて
迷う肢だと思います。本肢においては、第三者はA銀行に対する個人的な嫌がらせ目的で、抵当山林から伐採木材を別の場所に搬出させ、その後Bから木材を買い、引渡しを受けています。このような第三者は背信的悪意者に該当するため、A銀行としては第三者に抵当権を主張できます。

しかし、本肢のような場合に、抵当権者は、適切な維持管理を抵当権設定者に期待できないなどの特別の事情のない限り、第三者に対して自己への引渡しを求めることができません。これは、そもそも抵当権は被占有担保だからです。それに【考え方】を読んでも、抵当権の効力が及ぶか否か、抵当権を主張できるか否かについては記載されていますが、自己への引渡しを求めることができるか否かまでは記載されていません。先ほども言いましたように、抵当権を主張できたとしても、抵当権は被占有担保であることを考えれば、自己への引渡しまで認めることは出来ないだろうと推測ができると思います。

よってオは【考え方】に適合します。


以上より、【考え方】に適合するのはア・イ・ウ・オであり、正解は肢2です。



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