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解答




【 解説 】

民法総則のうち、行為能力と意思表示に関する問題です。基本的な事項ですので、それほど迷うような肢もなかったと思います。事例で出題されていますので、図などを書きながら、何が問題となっているのかをきちんと把握して解く必要があります。


◆まず肢1です。
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合には、家庭裁判所の審判によって成年被後見人となります。このときに、成年後見人が付されます(7条、8条)。成年後見人の法律行為は、原則として取り消すことが出来ます(9条)。このように家庭裁判所の後見開始の審判がなされないと、成年後見人とはなりません。したがって精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるからといって、Aは「当然に」成年被後見人になるわけではありません。

よって肢1は妥当ではありません。


◆次に肢2です。
被保佐人が、保佐人の同意を得ずして重要な財産上の取引等をした場合には、取り消すことができます。この場合、保佐人のみならず被保佐人自身も取り消すことが出来ます(13条)。取り消すことが出来るのは、13条に列挙されている事項および家庭裁判所が保佐人の同意が必要と審判で決めた場合です。それ以外の場合には保佐人の同意は必要ないので、取り消すことが出来ません。

本肢においては、動産の譲渡です。動産の譲渡については、「重要な財産に関する権利の得喪」に該当する可能性がありますが、必ずしも該当するとは限りません。ですので、「常に」譲渡契約を取り消すことができるわけではありません。

よって肢2は妥当ではありません。


◆続いて肢3です。
いわゆる第三者による詐欺です(96条2項)。相手方に対する意思表示について第三者が詐欺をした場合には、意思表示の相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことが出来ます。

本肢にようにAがその所有する動産をBに売った場合に、そのAB間の売買は鑑定人による詐欺があったという場合に、AはAB間の売買を取消しうるかが問題なわけです。

一般的な詐欺の場合には、契約の相手方が詐欺を行っていました。でも、本肢は違います。相手方ではなく、全く別の人(つまり第三者)が詐欺を行っています。

結論を言いますと、このような場合、AB間の事情につきBが悪意の場合のみ、Aは取消しうることになります。つまり、Aは鑑定人による詐欺があったからだまされてBに骨董品を売ったということを、Bが売買契約当時に知っていた、という場合にのみ、Aは取消しうるということです。

それはなぜでしょうか?理由を考えてみましょう。

本肢の例で誰が一番悪者かというと、それは言うまでもなく詐欺をした鑑定人です。

では、AとBではどちらの方が悪い(つまり保護されなくてもしょうがないか、ということです)のでしょうか?

この場合、確かにAは詐欺されているわけですから、かわいそうです。保護してあげたいです。

しかし、ここで無条件にAを保護するということは、Bを保護しないということを意味します。今度はそれではBがかわいそうです。Bは詐欺をしたわけではなく、何も悪くありません。

そこで、Bが、Aが詐欺されたという事情を知っているならば(つまり悪意であるならば)、かかるBを保護する必要はない、ということでAの取消を認め、Aを保護することに法律の規定はなっているわけです。Bが悪意であるならば、Bとしては「いずれAが詐欺取消をするかもしれない」と予想できるというわけです。

したがって、「Bがこの事情を知っているか否かにかかわらず」ではなく、Bがこの事情を知らない場合には、Aは当該意思表示を取り消すことができなくなるわけです。

よって肢3は妥当ではありません。


◆さらに肢4です。
本肢は心裡留保の問題です。心裡留保の場合、意思表示は有効です(93条)。

これはなぜでしょうか。

心裡留保の場合、意思表示をなした者(本肢のA)は、口に出した言葉と内心に食い違いが生じていることを知っています。知っていながら、わざわざ違う言葉を口に出しているのです。そのような者の言葉を無効にする必要はありません。

しかも、もし無効ということになると、相手方Bがかわいそうです。Bはせっかく高額な動産がもらえると思っているわけです。このBの期待を保護してあげないと、かわいそうです。他方、Aは知っていながら、食い違った言葉を発しているわけですから、保護しなくてもよいと言えます。簡単に言えば、自分の言葉に責任をとりなさい、ということです。

このように心裡留保は有効なのです。

よって肢4は妥当です。


◆最後に肢5です。
虚偽表示の問題です。虚偽表示は、当事者間では無効です(94条1項)。しかし、この場合、善意の第三者に対しては無効を主張できません(94条2項)。この第三者は善意であることは必要ですが、無過失までは要求されていません(大判昭12.8.10)。これは、第三者は虚偽表示の状態を信頼して利害関係に入ってきたので、第三者を保護すべき要請が強いこと、また虚偽表示を自ら作り出しているAとBは保護に値しないことから、第三者に無過失までは要求すべきでないとされているのです。

よって肢5は妥当ではありません。


以上より、正解は肢4です。



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