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解答




【 解説 】

本問の各肢は、表現の自由を規制する立法の合憲性判定基準として、二重の基準を用いる考え方と用いない考え方の二つの考え方のいずれかに立っています。よって、いずれの考え方に立っているのかを判断していけば、正解にたどり着けます。

ここで二重の基準というのは、精神的自由権を制限する立法は、経済的自由権を制限する立法よりも厳しい基準によって審査されなければならないという考え方です。これは、精神的自由権は民主制の過程の中で優越的地位にあるということに基づいています。

民主制の過程というのは、つまり、選挙をして代表者(国会議員など)を決め、その代表者が議論を尽くして法律を作成したりすることをいいます。この過程が正常に働いている時はよいのですが、正常に働かなくなった場合はどうなるのかということを考えてみます。

正常に働かないということは、どこかに異常があるわけです(これを「瑕疵がある」と言います)。例えば、表現の自由が制限されるという場合です。表現の自由を制限する法律が出来るとどうなるでしょうか。

表現の自由が制限されるわけですから、自由にものが言えないこともありえます。例えば、A主義を主張することが出来ない等です。そうなりますと、選挙のときに、A主義を主張して選挙運動が出来なくなります。表現できないわけですから。その結果、A主義を主張する人は代表者に選ばれることはなくなりますよね。主張できませんから。そうすると、それ以外の考え方の人が代表者に選ばれることになるわけです。

このように、表現の自由を制限することは、その考えを主張している人を代表者から締め出すことになります。これではそもそも表現の自由を保障した意味がないわけです。

しかも、民主制の過程に瑕疵があるわけですから、これからその法律を廃止しようと思っても出来ません。なぜなら、A主義の主張を制限することに賛成の人達が代表者になっているわけですからです。A主義を主張したい人達は、表現することを制限されているので、主張できません。

このような事態は民主制の過程が正常に働いていないので、法律の合憲性が民主制の過程の中で判断することが出来ません。

そこで、民主制の過程の外にいる裁判所が積極的に判断すべきだということなのです。

他方、経済的自由権を制限されても、民主制の過程に瑕疵があるわけではありません。もしその法律が気に入らなければ、そのような法律を作った代表者(国会議員など)に、次の選挙で投票しなければよいのです。表現の自由は制限されていないわけですから、そのような経済的自由権を制約する法律を制定することを阻止しようと活動すればよいわけです。つまり、そのような主張も可能です。そして、当該法律を廃止してくれる人に投票すればよいのです。そうすることによって、国民自らの意思によって、法律の制定をしたり、阻止したり、また廃止したりと出来るわけです。

このような考えによって、精神的自由権は民主制の過程の中で優越的地位にあり、精神的自由権を制限する立法は、経済的自由権を制限する立法よりも厳しい基準によって審査されなければならないとされているのが二重の基準です。


◆まず肢1です。
本肢は、「広告のような営利的な表現活動も…表現の自由の保護が及ぶものの、その場合でも保障の程度は民主主義に不可欠な政治的言論の自由よりも低い、とする説がある。」と述べていることから、二重の基準の考え方に立っていることがわかります。


◆次に肢2です。
本肢は、「個人は様々な事実や意見を知ることによって、はじめて政治に有効に参加することができる」と述べていることから、21条によって保障されている知る権利を重要な権利と考えていることがわかります。つまり民主制の過程の中で優越的地位にあるものと考えていると推測され、さらには二重の基準の考え方に立っているのではないかと推測されます。


◆続いて肢3です。
本肢は、「経済活動も表現活動も同等な重要性を有する」と述べていることから、二重の基準の考え方に立っていないことがわかります。


◆さらに肢4です。
本肢は、「政治的な言論を特に強く保護する趣旨と解される」と述べていることから、二重の基準の考え方に立っていることがわかります。


◆最後に肢5です。
本肢は、「民主主義社会において、国民が国政に関与するために重要な判断の資料を提供し」と述べていることから、二重の基準の考え方に立っていることがわかります。


以上より、正解は肢3です。



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