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解答




【 解説 】

強制履行の方法には、直接強制、代替執行、間接強制の三通りがあります。直接強制とは、債務者が自ら履行しないときに、国家機関の力によって債務者の意思にかかわりなく債権の内容を実現することをいいます。この直接強制は物の引渡しを目的とする場合(与える債務)にだけ認められ、なす債務については認められない。また直接強制が許される場合には、代替執行や間接強制は認められません。代替執行とは、債権者に給付実現の権限を与えて、債務者に代わり債権を実現させ、それにかかった費用を債務者から取り立てる方法をいいます。代替執行が許される場合には、間接強制は認められません。間接強制とは、債務者が履行しない場合に賠償金の支払を命じることによって心理的に圧迫し、債務者の給付を促す方法をいいます。


アについて
企業は銀行に対して金銭の返還債務を負っています。金銭の返還債務は与える債務であり、国家機関が企業から金銭を取得したり、また財産を処分したりするなどして、銀行に対して与えることによって給付内容の実現が可能です。

よって直接強制の方法によって実現が可能です。


イについて
本肢のような債務は、なす債務であるから債務の性質上直接強制の方法によることは出来ない。なお、本肢のような芸術家に作品をつくらせるような債務の場合には、強制執行によることはできず、芸術家が作品を作らないような場合には損害賠償によるしかない。

よって直接強制の方法によって実現することはできません。


ウについて
本肢は不作為を求めるなす債務です。この場合には直接強制は出来ません。間接強制の方法によることになります。夜12時を過ぎてもカラオケボックスが営業を続けている場合に、例えば一時間あたりいくらの賠償金を課すという方法です。

よって直接強制の方法によって実現することはできません。


エについて
本肢は、謝罪広告をなす債務です。これは直接強制の方法によることは出来ません。この場合には、代替執行の方法によります。判例も「謝罪広告を新聞紙上に掲載すべきことを命ずる判決の執行方法は代替執行によることができる」としています(最判昭31.7.4)。

よって直接強制の方法によって実現することはできません。


オについて
本肢の場合、賃借人が負っているのは建物明渡債務です。この建物明渡債務は与える債務です。

よって直接強制の方法によることが可能です。


以上より、直接強制できるのはアとオの二つであり、正解は肢2です。



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