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解答




【 解説 】

時効学説についての出題です。時効について、学説の対立まで勉強している人は、あまりいないのではないかと思います。行政書士試験の出題レベルとしては、かなり難易度の高い問題だったと思います。

A説は、取得時効が成立した場合に権利を取得させ、消滅時効が成立した場合に権利を消滅させると言っているので、いわゆる実体法説と言われている考え方です。他方B説は、長期間の経過によってそのことを証明できないことにより不利益を被ることのないよう救済すると言っているので、いわゆる訴訟法説と言われている考え方です。


◆まず肢1です。
時効は当事者が援用しなければ、裁判所は時効のよって裁判をすることが出来ません(145条)。そしてこのように時効について当事者の援用が必要とされているのは、時効の利益を受けることを潔しとしない者の意思を尊重しているからです。時間が経ったとしても借りたお金はきちんと返すと考える人だっているわけです。時間が経てばいいというわけではない。このように一面において、時効の効果が道徳に反する面があるため、時効による利益を受けるかどうかを当事者の良心にゆだねているわけです。このこと自体は、どの説を採ったとしても同じことです。

よってA説を採ったとしても、本肢とは矛盾しません。肢1は妥当ではありません。


◆次に肢2です。
まず弁論主義という言葉に戸惑った人が多いと思います。弁論主義とは、裁判に必要な事実や証拠の収集を当事者の権能及び責任に委ねるという原則をいいます。民事訴訟法で出てくる言葉です。知らなかった方は、これを機会に覚えておきましょう。B説は訴訟法説ですから、時効制度を訴訟法上の証拠に関する制度と考えていますので、肢2とは矛盾しません。

よって肢2は妥当ではありません。


◆続いて肢3です。
時効が完成し、当事者が時効を援用すると、時効の効力はその起算日に遡ります(144条)。つまり、はじめに遡って権利の得喪の効果を生じさせるわけです。これはA説と矛盾しません。

よって肢3は妥当ではありません。


◆さらに肢4です。
訴訟法説は、時効制度を訴訟法上の証拠に関する制度と考えています。ですから、時効の援用は、権利関係を証明するための法定証拠を提出する行為であるとの肢4の説明は、B説と矛盾しません。

よって肢4は最も妥当と言えます。


◆最後に肢5です。
A説の実体法説は、さらに確定効果説と不確定効果説に分かれ、不確定効果説はさらに解除条件説と停止条件説にわかれます。なので、肢5はA説とは矛盾しません。

よって肢5は妥当ではありません。


以上より、正解は肢4です。



【 解き方 】
行政書士受験生にとっては、非常に難しい問題だったと思います。現場で何が問題となっているのかわからないという受験生も多かったのではないでしょうか。こういう問題の場合にはあまり深く考えても正解にはたどり着けないことが多いです。あっさりと解くのがいいのではないかと思います。

A説とB説を読みますと、A説は何を言っているのかよくわからないが、B説は「証明」という言葉から、なんとなく裁判のことを言っているみたいだ、ぐらいのことはわかるのではないでしょうか。

次に肢を1から順番に見ていっても、妥当なのかどうかよくわからないと思います。しかし肢4をみると、「証明・・・B説と矛盾しない」とあります。B説にも「証明」という言葉がありますから、なんとなく矛盾しないのではないかと、いちおう考えます。そしてB説と肢4が矛盾するかどうかを考えます。肢4は「証拠を提出」と言っているので、裁判のことを言っているのだろうと推測できます。そしてB説を改めて読むと、B説と肢4は別に矛盾はしないということがなんとなく思えてくるのではないかと思います。そこまで考えがおよべば、他の肢が妥当かどうかはわからなくても、少なくとも肢4は妥当らしいと考え、肢4をマークできるのではないかと思います。



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