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行政書士試験・公務員試験等合格講座−めざせ憲法の達人!
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解答




【 解説 】

◆1
いわゆる部分社会の法理です。
「大学は、国公立であると私立であるとを問わず、」「一般市民社会とは異なる特殊な部分社会を形成しているのであるから、このような特殊な部分社会である大学における法律上の係争のすべてが当然に裁判所の司法審査の対象になるものではなく、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題は右司法審査の対象から除かれるべきものであることは、叙上説示の点に照らし、明らかというべきである。」「単位授与(認定)行為は、他にそれが一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情のない限り、純然たる大学内部の問題として大学の自主的、自律的な判断に委ねられるべきものであつて、裁判所の司法審査の対象にはならないものと解する」
(最判昭52年3月15日)

最高裁の判決によれば、卒業の認定には司法権の判断は及ぶものの、大学2年生の民法の単位を認定するかどうかについては及ばないことになります。この場合には内部的な問題にとどまるということです。

よって肢1は妥当です。


◆2
「同法(注・警察法)は、両院において議決を経たものとされ適法な手続によって公布されている以上、裁判所は両院の自主性を尊重すべく同法制定の議事手続に関する所論のような事実を審理してその有効無効を判断すべきでない」
(最判昭37年3月7日)
自律権です。そもそも自律権とは国会や各議院などの内部事項について自主的に決定できることを言います。この場合、それぞれの機関が判断した事項については、その判断を尊重し、裁判所はそれを審査することは出来ません。

よって肢2は妥当です。


◆3
これも肢1と同様に部分社会の法理です。
最高裁は、政党が党員に対してした処分について次のように判断しています。
「一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審査権は及ばない」
(最判昭63年12月20日)

よって肢3は妥当です。


◆4
衆議院の解散の効力が争われた事件につき、最高裁は統治行為論により、裁判所の審査は及ばないとしています。
「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときはたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であっても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の破談に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解すべきである。この司法権に対する制約は、結局、三権分立の原理に由来し、当該国家行為の高度の政治性、裁判所の司法機関としての性格、裁判に必然的に随伴する手続上の制約等にかんがみ、特定の明文による規定はないけれども、司法権の憲法上の本質に内在する制約と理解すべきものである」
(最判昭35年6月8日)

このように判断して、衆議院の解散がいかなる場合に許されるかについては、裁判所の判断すべき法的問題ではないとしています。

よって肢4は妥当ではありません。


◆5
板まんだら事件です。司法審査の対象となるためには、法律上の争訟にあたる必要がありますが、最高裁は次のように判断して、法律上の争訟にあたらないとしています。
「本件訴訟は、具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の形式をとっており、その結果、信仰の対象の価値又は宗教上の教義に関する判断は請求の当否を決するについての前提問題であるにとどまるものとされているが、本件訴訟の帰すうを左右する必要不可欠のものと認められ、」「結局本件訴訟は、その実質において法令の適用による終局的な解決の不可能なものであって、裁判所法三条にいう法律上の争訟にあたらないものといわなければならない」
(最判昭56年4月7日)

よって肢5は妥当です。


以上より、正解は肢4です。


【 解き方 】
判例の重要性を再確認するとともに、やはり重要判例は押さえておかなければならないことを再認識させられる出題だと思います。肢4は最高裁が統治行為論を採用したと言われている有名な苫米地事件の判決ですから、多くの受験生が学習済みであり、他の肢も有名な判例ですから、試験会場で迷うことはなかったと思います。



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