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衆議院の解散



この衆議院の解散というのは、実際にもときどき行われているので、皆さんもそれなりになじみが あることと思います。行政試験においても、公務員試験においても、よく出題されているところです。 しっかりと勉強しておいて下さい。

衆議院の解散というのは、衆議院議員の全員につき任期満了前にその地位を失わせることです。 簡単に言えば、衆議院議員全員が、まだ任期が満了していないのに、議員ではなくなるということです。

この衆議院の解散という制度は、権力分立という制度と民主主義という制度の両方から認められて いるものだと言われています。

衆議院には、内閣不信任案の決議権があります。そこでこれに対抗する手段として内閣に衆議院の 解散権があることになります。これが権力分立から認められるということです。

また、衆議院というのは、立法権を有しています。これに対して内閣は行政権を有しています。 ここで、もし立法権と行政権とが対立し、お互いに譲らなかった場合に、衆議院を解散して国民 に判断を仰ぐということになります。衆議院を解散して総選挙をし、いずれか多数を占めた意見 を主張する方が国民の支持を得ているということになります。これが民主主義から認められると いうことです。

まあ、いろいろありますが、一応上記のように言われております。


ここの衆議院の解散については、このような制度の意義よりは、解散権の根拠についての出題が多いです。

憲法上、どのような根拠に基づいて解散しうるかということです。さきほど、「立法権と行政権 が対立し、お互いに譲らなかった場合に、衆議院を解散して」とお話しましたが、実はここは争い のあるところです。

代表的な学説を取り上げてみたいと思います。

69条限定説というのがあります。これは、そのまま字のごとく解散するのは69条の場合のみ ということです。解散の行われる場合について69条だけが規定していることを理由にしています。 確かに、この考えは権力分立の面を説明してはいます。

しかし、69条は本来内閣の総辞職についての規定です。加えて、日本国憲法においては議院内閣制 がとられ、さらに政党政治が発達した現代では、内閣(行政権)と国会(立法権)が対立することは ほとんどなくなっています。

よって、現代においては、衆議院の解散はその民主主義的意義に大きな意味があると思います。69 条限定説では、このような民主主義的な側面がなくってしまいます。

69条の場合以外にも解散がなされるとして、衆議院が自律的に解散できるとする自立解散説という 考え方があります。

この考え方は、その根拠を国会の最高機関性に求めています。

しかし、この考え方によりますと、衆議院における多数派の議員の思惑によって少数派の議員の議員 たる地位が奪われることになるので、不当であるとされています。

個人的には、多数派の議員も議員たる地位を失うので、この批判はどうなのかなと思ったりもするの ですが、「多数派の思惑」という点からすると、やはり自律解散は不当だと思います。

ところで、解散については、憲法上69条以外にも、7条3号に規定があります。天皇の国事行為の 規定です。天皇は国政上の決定権を有しないので、天皇の国事行為は形式的なものに過ぎません。

しかし、解散というものは元来政治的なものです。そして天皇の国事行為は内閣の助言と承認に 基づいて行われるものです。

ですから、内閣の助言と承認に基づいて天皇が解散することになります。そして、天皇が有する のは形式的な部分だけですから、実質的な部分については、内閣が有するとする考え方があります。 7条3号説です。

現在においては、この7条3号説が多数説ではないかと思います。

この説によったとしても、内閣は自己都合でいつでも解散できるわけではないとされています。 一般的には、先ほどからお話している内閣と国会が対立しお互いに譲らなかったような場合、 新たに国政上の重要問題が発生し民意を問う必要がある場合など、それなりの理由が必要である とされています。


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